それからもことあるごとにやりとりを重ね、遠藤氏との付き合いも2年近くなって、絵文字をつけるようなフランクなメールも送ってくれるようになった2021年。私は同僚から衝撃の事実を告げられることになる。
「そういえば遠藤さん、実在しないらしいよ」
耳を疑った。
「え?どういう意味?」と動揺しながら、(オンライン会議ツール越しに)何の比喩表現かと問うと、そのままの意味だと返答があった。
なんと「遠藤ひかり」という人物は会社に存在せず、その実態は複数人の人事社員が運用する、人事部の具現化・擬人化ともいうべき架空の人物だったのだ。狼狽する私に追い討ちをかけるように、同僚が言う。
「ほら、他にもいるじゃん。ローム君とか、こまちさんとか……」
メリットは複数、デメリットはない「架空の人物」
担当者に話を聞くと、上記のような部署共有アカウントの運用が始まったのは2016年、「遠藤ひかり」自体は2017年から開始したのだという。現在「遠藤ひかり」は業務委託4名・従業員1名の計5名の社員で運用されている。
目的は業務の属人化防止だ。一つの共有アカウントを作ることで、各担当者に問い合わせが散逸することなく、情報を集約することができる。
デメリットはないとのことだが、運用上、対応を標準化するためのマニュアル化とトレーニングは必須となるそうだ。
一方、運用が軌道に乗れば、業務委託者の数を増やすだけで、上下する業務量に柔軟に対応することが可能となる。人材確保が難しい状況でも、時短勤務やスポット勤務などを組み合わせて運用できることは、大きなメリットだという。
とはいえ、これは単に共有アカウントのメリットだ。人事部専用のメーリングリストや、「人事部共有アカウント」という名前のアカウントでも変わらないはずで、わざわざ架空の人物を紐付けるメリットはどこにあるのだろう。
この点について、いち社員として遠藤氏と交流して感じたのは、人格があることで相談のハードルが格段に下がるということだった。仮に彼女が「人事部・共有アカウント」という名前だとしたら、人事部に相談すべきかどうかわからない曖昧な事柄について、まずは知人に相談したように思える。結果的に問い合わせが散逸し、情報の一元化は困難になっていただろう。
「見知った人」という属性に対する心理的な安全性は、想像しているよりもはるかに大きいようだ。たとえそれが架空のものであろうとも。
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- 取引先の営業部のメールアドレスが共用になっていて、便利といえば担当者が鬱になろうと辞めようとスムーズに取引できたのは便利だったが、誰かが読めば既読になるらしく、メールのレスポンスが悪くメールした後に電話しなくてはならなかった。
- 当社の社員が、作業担当の取引先の若い女性と会社のGMailに直でメールするようになったが、実は上司も見ていた。
なんてことがあったなあ。
あと近隣の業者さんに伝票が架空の名前すぎて。

桃色花,角松一郎,伊賀忍